寝たきり銀幕デビュープロジェクト

プロジェクトの背景

寝たきり大国
ニッポンの介護を
もっとポジティブに

世界でも類を見ない超高齢社会の日本は、世界一の「寝たきり大国」とも言われています。その中で、介護業界の人材不足が深刻な社会問題となっており、その要因の一つとして指摘されているのが「介護の仕事はきつすぎる」といった世間の根強いネガティブなイメージです。ただ、それは日々、老人ホームでご入居者様たちと一緒に介護と楽しく向きあっている介護現場の真の姿とは言えません。

そこで、私たち「社会福祉法人みずき会」は、本当はもっとポジティブな介護職のイメージを伝えるべく、新たなプロジェクトを始動しました。「寝たきり」や「要介護」の状態にある老人ホームのご入居者様たちを主役に据え、その人生にスポットライトを当てたオリジナル映画のポスターを介護職員も一丸となって製作。往年の映画スターたちのように銀幕デビューを華やかに飾っていただきます。

社会福祉法人みずき会 理事長 阿部 泰士

CONCEPT

高齢者は、往年のスターだ。

高齢者の方々は、
今の若い世代が知らない時代を
駆けぬけてきた先人たちです。
日々、みずき会にご入居されている方々から、
ときにドラマチックな十人十色の人生の
エピソードを聞いていると、
「まるで、往年のスターのようだ」と
思うことがあります。
そこで、このフレーズをそのまま、
今回のプロジェクトのコンセプトに
据えることにしました。

寝たきり銀幕デビューまでの道のり

STEP 1

ヒアリング
主役を演じるご入居者様たちの「忘れられない人生の思い出」をご本人やご家族にヒアリング

STEP 2

映画タイトル・ストーリーづくり
ヒアリングしたエピソードをもとにオリジナル映画のタイトルやストーリーを考案

STEP 3

ポスターラフデザイン
オリジナル映画のポスターのラフデザインをつくり、文言パネルなどの写真に散りばめるアイテムを製作

STEP 4

本番撮影
実際に介護施設のベットの上で「寝たまま」の状態で撮影。介護職員が周囲から文言パネルなどを支え、ラフデザインを完全に再現

スタイリストとヘアメイクの手で、往年のスターへと変身中

カメラの角度や照明の位置、ベッドメイキングなどをミリ単位で調整するテスト撮影が続く

いざ、銀幕スターに変身した主役がクランクイン

介護職員たちが主役を周囲からサポート

撮影を最後の最後まで盛りあげます

銀幕デビューを飾る、最高の一枚が誕生!

それでは、
往年のスターたちが主役として
銀幕デビューを飾った
映画作品をお楽しみください。

SCREEN1

バレー VS 編み物
極彩色の大恋愛活劇!

『ミサヲの恋は時間差』

この映画のあらすじ

憧れのコーチに恋心を抱くバレーボール一筋の体育会系少女ミサヲの前に、編み物一筋の文化系お嬢様・ヒバリが恋のライバルとして現れる。コーチを振りむかせるのはミサヲかヒバリか、その結末やいかに。ミサヲが秘密のバンダナを外すとき、真っ赤な太陽のごとく熱き三角関係は、まるで川の流れのように大きな愛に包まれる。

『ミサヲの恋は時間差』主演紹介

主演 ミサヲ 役・粟津ミサヲさん(1936年生まれ 81歳)

趣味
編み物
青春時代の思い出
バレーボールの中衛として活躍し、大会での優勝経験もある。他にも卓球・テニス・バスケットボール・ソフトボールなどをオールマイティにこなすバリバリのスポーツマンだった
好きな映画
美空ひばりが出演している映画はなんでも。追っかけをするほど大好きだった
撮影エピソード
青春時代はバレーボールに明けくれ、今は編み物に打ちこんでいらっしゃるミサヲさん。そのどちらもがモチーフになっている作品に「ウレシー!」と大喜び。かつて追っかけをしていた大ファンの大物歌手を彷彿とさせる随所に散りばめられた設定にも、「ほんとにスターになったみたいやなあ!」と、持ち前の明るい笑顔で撮影に臨んでくれました。

「彼氏にも見せたいわあ(笑)」

ご本人にプロジェクトの感想を聞いてみました

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介護職員の方々から「女優さん、おつかれさま!」と声をかけられたミサヲさん。ご自身が主役のポスター写真を見てもらうと「よく撮れてる、素晴らしい! サイコーの思い出やな!」と、出来栄えに満足してくれたご様子。「家族にも見せたいわあ。もちろん、彼氏にも(笑)」と冗談(?)も飛びだしていました。

SCREEN2

この丸腰が目に入らぬか!
痛快・空手時代劇

『無刀の泰平』

この映画のあらすじ

庶民を病魔から救う町医者・遠山泰三は、江戸のご当地団子に目がない心優しき食いしん坊。ただ、丑三つ時を過ぎれば、「この町にも病魔が巣食っている」と愛犬・礼生(れお)を引きつれて、悪を倒す正義の味方へと密かに姿を変える。命を守る医者の矜持を胸に、刀は使わず空手で鍛えた腕だけで、ときには鉄砲のような正拳突きを、ときには日本刀のような鋭い手刀を江戸の悪人どもへお見舞い。一人も殺めずに世を泰平に治す丸腰の男を、人は「無刀(むとう)の泰平」と呼ぶのであった。

『無刀の泰平』主演紹介

主演 遠山泰三 役・中尾泰三さん(1932年生まれ 85歳)

趣味
家族とおいしいものをたくさん食べ歩くこと。介護施設に入る前は、愛犬レオと鶴見緑地公園を散歩するのが好きだった。空手にも若い頃から打ちこみ、腕を磨いてきた
青春時代の夢
薬剤師として働いていたが、病気に冒された人たちを救えるような医者になりたかった
好きな作品
「水戸黄門」や「大岡越前」など、正義の味方が活躍する勧善懲悪モノの時代劇
撮影エピソード
「要介護4」の寝たきり状態にある泰三さんですが、若い頃から打ちこんでこられた空手を武器に、正義の味方らしい力強い姿で見事にポージング。撮影が終わると「袴を履かせてもらえて、かっこよかった」と喜んでいらっしゃいました。

「いつのまにか忘れていた父との思い出があふれて止まらなくなりました」

ご家族の道子さんにプロジェクトの感想を聞いてみました

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— プロジェクトへのご参加を決められた理由はなんですか?

父は足が不自由で、車椅子での生活を余儀なくされています。そのため、日々の楽しみといえば、おいしいものを食べることくらいでした。なにか刺激があって楽しめるような新しいことができたらいいな。そんなことを娘として考えているときに今回のプロジェクトへお誘いいただき、ぜひ参加したいと思いました。

— プロジェクトへ実際に参加されてみて、いかがでしたか?

撮影前のアンケートで「父との人生の思い出」をヒアリングされた際、いつのまにか忘れてしまっていたエピソードが次から次へとあふれ出てきて、書ききれなくなってしまいました。とても懐かしく、和やかな気持ちになったのを覚えています。

— ふだん、どのようなことを意識してお父様との時間を過ごしていらっしゃいますか?

昔、父が「すき焼きを食べたい」と言ったことがありました。せっかくなので奮発して、高級なお肉とお豆腐でこしらえて持っていくと、父は「まずい」と言って残してしまい、私はがっかりして帰りました。ただ、しばらくして、父の「すき焼きを食べたい」という言葉は「家族団らん」を意味していたんじゃないかと気づいたんです。そこで後日、高級すき焼きには到底及びませんが、3個で98円のプリンを持って行き、家族三人で食べました。そのときの父の嬉しそうな顔は、今でも忘れられません。そういったなにげないところに転がっている幸せを大切にするように心がけています。

— 現在、「介護」や「寝たきり」といった社会問題が深刻化しています。当事者のお一人として、今後はどのように向きあっていきたいとお考えでしょうか?

もし、寝たきりになって介護を受けないといけないと宣告されれば、その現実を受けいれることは、とても難しいことです。本人も家族も自分のことを責めたり、落ちこんだり、イライラしたり、時には怒りを爆発させてしまったり、「死んだほうがいいのかもしれない」と思いつめてしまうときも正直、しばしばあります。だからこそ今回のプロジェクトは、私たちにとってとても素敵な機会になりました。これからも、父の笑顔がふだんの生活の中にたくさんあふれてくれることを心から願っています。

撮影を終えて

みずき会の職員インタビュー

正直、プロジェクトタイトルを
初めて聞いたときは驚いた

社会福祉法人みずき会 理事長 阿部 泰士

最初に「寝たきり銀幕デビュー」とのプロジェクトタイトルを聞いたときは正直、驚きました。ただ、「高齢者は、往年のスターだ」というコンセプトを読み、これなら今の社会における介護問題のイメージを根本的に変えられるかもしれないと考え、プロジェクトの実施を思いきって決断しました。介護業界を変えることは、日本の未来を変えることだと思っています。今後も、新しくて面白いチャレンジで、介護業界に革新を起こしていきたいです。

入居者さんと楽しみながら、
介護のイメージを
変えていきたい

介護職員 赤松 利菜さん(24歳)

— 今回のプロジェクトを通して、介護という仕事と、どのように向きあっていきたいと感じましたか?

私自身、この業界に入る前は、「介護」という言葉をどこか避けている部分がありました。だからこそ、今回のプロジェクトのように、入居者さんと介護職員とが一体になって楽しめる企画やレクリエーションに楽しみながらチャレンジし、介護に対するイメージを少しずつでも前向きに変えていければと思います。

自分たちで楽しんで
終わりではなく、
介護の魅力をちゃんと
伝えていきたい

介護職員 福井 徹さん(22歳)

— 今回のプロジェクトに参加されてみて、正直、どのように思われましたか?

新しくて面白いチャレンジが増えていくことはとても素晴らしいなと感じる一方で、自分たちで楽しんで終わりにしてしまうのではなく、いかに多くの人たちに知ってもらうかが肝心だと思いました。介護は、人間相手の仕事ですから、自分のやるべきことが毎日のように変化していくため、常に新鮮で楽しいものなんです。介護の本当のイメージを、もっと多くの人に伝えていきたいと改めて感じました。

人生を輝かせる
名脇役、求む。

みずき会では、今回のプロジェクトで製作したオリジナル映画のポスターを求人用ポスターとして実際に掲示していきます。ご入居者の皆様を「往年のスター」として尊重し、その主役たちの人生を輝かせる名脇役として活躍してくれる介護人材との出会いを楽しみにしています。

みずき会は「職員たちの働く環境を良くすることが介護の質を上げ、ご入居者様たちの生活の向上につながる」と考え、「最良の職場環境の構築」を理念として第一に掲げております。

2018年には、新たな施設「昭和館」(ユニット型特別養護老人ホーム39室、ショートステイ6室)もオープン予定です。「昭和」をコンセプトにした、古き良きレトロな雰囲気で入居者の方々を懐かしく包みこむ空間で、あなたの新たな活躍の場をどんどん楽しみながら広げていってください。

ぜひ、これからも介護のイメージや価値観を前向きに塗りかえていけるような新しくて面白いチャレンジを、私たちと一緒に続けていきましょう!